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ファーマシーそま通信2026年夏号

2026.06.02

ファーマシーそま通信 2026夏号
    私たちのオススメ


☆不安とうまく付き合うコツ☆
         兒玉眞理子
 不安とは、将来起こりうる危険や出来事に対して、対象が明確でないまま抱く、「漠然とした恐怖や心配」のことです。また、自分の存在価値が揺らぐ時にも生じる感情です。

1. 対象がない恐怖「なんとなく怖い」といった漠然とした感覚
2. まだ起きていないことに対する心配「杞憂」
3. リスクを予知し、準備するための「安全装置」
このような不安に対処するには、「ジャーナリング」という手法が用いられます。
 不安=脳の中の幽霊。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」です。まだ起きていないことを頭のなかで作り出しているため、脳の中の幽霊を可視化してその正体を見てみます
幽霊だと思っていたものが、柳か、尾花なのかを確認する作業です。

<ジャーナリングの効果>
① マインドフルネス(今この瞬間に集中する)、心を整える。
② ストレス軽減、ネガティブな感情を外に出すことで、心のモヤモヤが解消する。
③ 自分の本心や思考パターンを客観的に理解できる自己理解。

<ジャーナリングの行い方>
頭に浮かんだ思考や感情をありのままに紙へ書き出し、頭の中の幽霊を可視化します。
① 環境を整える。(ノートとペンを用意して、静かな場所で行う)
② 5分間など時間を決めて集中する。
③ ありのままに書く。思ったことをそのまま書き出す。

不安で、動悸、発汗、息切れ、頭痛、震え、胃腸の不快感、過緊張などの症状が出るのは脳の誤作動です。脳に辛い記憶が蓄積して熱(炎症)を持たないうちに、漢方薬を使って早めに誤作動を解除しましょう。ご相談ください。
                            (荒川充洋氏記事より)

☆うつ病などは脳の炎症だった!☆
        兒玉眞理子
 日本ではうつ病や適応障害と診断される人が年々増加傾向にあります。令和2年時点で「うつ病や躁うつ病を含む気分感情障害が169.3万人、「神経性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」が123.7万人となっており、10年前と比較して約2倍に増加しています。

 うつ病に関しては、西洋医学的には1980年代に脳内セロトニンの減少を原因とする「セロトニン原因説」が脚光を浴びてSSRIなどの抗うつ薬が開発されてきました。しかし現在では「セロトニン原因説」は疑問視されており、これに替わって、うつ病の原因は脳内の炎症であるとする「神経炎症仮説」が有力視されています。
 2014年に理化学研究所が、慢性疲労症候群患者では脳内の広い領域で炎症が生じており、炎症が見られる領域は認知機能低下などの神経症状と相関があると発表しました。続いて2015年にカナダのトロント大学の研究チームから、うつ病患者の脳内の炎症が健常者の30%高いと発表があり、「神経炎症仮説」が有力視されるようになりました。

 ストレスによって直接に脳内に炎症が起きますが、体内の別の場所で出来た炎症性サイトカインも脳内に炎症を発生させるとされています。

 ストレス性疾患に関して漢方では、全身を巡る「気」が停滞することで生じるとされ、それを「肝鬱気滞」と呼びます。実は漢方薬の分野でも「肝鬱気滞」に用いられる柴胡の成分や、釣藤鈎の成分にも脳内の神経炎症を抑える作用が見つかっています。

 さて、麝香羚羊角沈香サフランなどは、臨床上も不安神経症やADHD様の症状に即効性が認められているだけでなく、副作用リスクも少ないという特徴があります。これらの生薬も脳内の炎症を抑える作用のあることが、実験的に確認されています。

 また、鹿茸には体内の抗酸化酵素の活性を高める作用が報告されていて、体内の炎症を抑制して、間接的に脳内に炎症性サイトカインが流れ込むのを低下させる効果が期待できるほか、鹿茸の「精」を生じさせる働きは、「精」から生まれる「髄」の海である脳の状態を健全に保つ効果もあります。
                     (丸山運平氏記事より)
*炎症性サイトカイン(炎症反応を促進するタンパク質)

☆ 慢性炎症が老化を促進する!☆
                兒玉眞理子
 近年、老化研究の分野では「インフラメイジング」(inflammaging)という概念が注目を集めています。炎症(inflammation)と老化(aging)を組み合わせた造語で、イタリアの免疫学者が提唱したものです。加齢とともに体内でごく軽度の炎症が、はっきりとした症状がないまま、体内でくすぶり続ける火種のように持続し、それが老化を推し進める一因となるという考え方は、老年医学や免疫学の分野で広く支持されてきました。
 糖尿病や動脈硬化、認知症など、これまで別々に語られることの多かった加齢関連疾患の背後に「慢性的な軽度の炎症」が共通して存在することが明らかになってきました。

 炎症の程度は生活習慣によって影響を受けるため、運動、食事、腸内環境の改善、ストレス管理、睡眠といった日常的な取り組みが、老化の進行に穏やかに働きかける可能性が示されています。老化を一方的に受け入れるだけでなく、自らの選択によってその速度に関与できるという視点を与えたという点でも「インフラメイジング」の概念は大変重要です。
 慢性炎症は、目立った痛みを伴わないまま長く続く“静かな炎症”であり、身体の組織にじわじわと負担をかけ続けます。細胞レベルでは複数の変化が同時に起こり、それらが互いに影響し合いながら老化を推し進めることが分かってきました。

〇 慢性炎症の指標が高い集団では、生物学的年齢が実年齢より高く評価される傾向が報告されており、心血管疾患や代謝異常、認知機能の低下といった変化とも深く関わります。また、慢性炎症の指標(CRP)が高いほど白血球のテロメア長が短い傾向が示され、炎症とテロメア短縮の関連が指摘されています。
 テロメアは命の回数券。細胞の中の染色体の端にあり、細胞分裂するたびに短くなっていきます。一定の長さ以下になると細胞分裂が停止し、老化が進みます。
〇 細胞のエネルギー産生を担うミトコンドリアも炎症の影響を受け、その機能低下は疲労感や代謝の変化に関係する可能性があり、フレイルにつながります。
〇 免疫細胞も同様に炎症にさらされ続けることで、加齢に伴う機能低下が早まり、感染症にかかりやすくなることが知られています。

 これら複数の変化は互いに関連しながら進行し、全身に影響を及ぼし老化を加速させると考えられています。

【慢性炎症でおきる身体のサイン】
 慢性炎症が健康に与える影響は多面的です。
 炎症が脳の働きに及ぼす影響については近年特に注目されており、血中の炎症性サイトカインが高い状態が続くと、集中力や記憶力の低下が見られることが報告されています。
 また、関節や筋肉のこわばりが続く背景には炎症が関与している可能性があります。さらに、身体の痛みや不眠、不安といった症状についても、慢性炎症との関連が指摘されています。
 季節の変わり目にアレルギー症状が強くなったり、また、腸内環境の乱れによる便秘や下痢、自律神経の乱れによる手足の冷えなども慢性炎症が関与している可能性があります。
 こうした一つ一つの変化は、年齢のせいと片付けられがちですが、慢性炎症が背景に潜んでいることも少なくありません。

【慢性炎症を抑え、老化を穏やかにする生活習慣】
 慢性炎症は日々の生活習慣を見直すことで、特別な方法を用いなくても身体に無理のない工夫の積み重ねで炎症の程度をやわらげ、老化の進み方を穏やかにすることができます。
 ☆運動
 必ずしも激しい運動である必要はなく、ゆっくりとした散歩や軽い体操でも、継続することで筋肉への血流が改善し、炎症物質が滞留しにくくなります。とくに高齢者では、短時間の運動習慣でも、炎症を抑える効果が示されています。
 ☆睡眠
 睡眠の質を良くすることも重要です。強い光を浴びるタイミングを間違えると体内時計が狂います。朝に自然光を浴び、夜は光を控えめにすることで睡眠のリズムが整い、身体の修復が進みやすくなります。
 ☆食事
 腸内環境が整うことで免疫の働きが過剰になりにくくなり、全身的な炎症が穏やかになる方向に働くという報告があります。食物繊維やオリゴ糖など腸内細菌のエサになるもを摂りましょう。腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸は炎症を調整し、腸内環境の健やかさは炎症性老化の観点からも見逃せない要素です。
 オメガ3脂肪酸は炎症性サイトカインに穏やかに働きかけます。
 緑茶のカテキン類や果物・野菜のポリフェノールは酸化ストレスの軽減を通じて炎症を抑えます。        
                              (湧永製薬株式会社・学術 平ケ倉ゆき氏記事より)

 これらの成分や習慣は取り入れやすく、続けることで炎症の抑制に役立つと考えられます。何も目新しいことはなく、
今までお伝えしてきたことではありますが、きちんと見直してみることで老化防止ができるということですね。